金門島をバイクで巡る旅(後編) 〜 金門島の旅2025

 金門島をバイクで巡る旅、後編

 午後、まずは島の中央辺りに位置する瓊林集落を目指す。金城からはバイクで20分ほどで到着。集落の入り口にバイクを停めるところがあったので、そこにバイクを停め集落へ。

 入口には「蔡」という文字があるが、ここは「蔡」姓が多い集落らしい。ぱっと見これまで訪れたどの集落よりも広大な感じがする。そんな訳で早速集落内へと進む。

 それにしても人が全然歩いていない。観光客らしき年配のカップル、地元の人を1人見かけただけで誰とも会わず。金門島の良さはこんな素晴らしい集落でもごちゃごちゃと混雑していないところだと思う。

 地元の方はとても感じがよく、笑顔で挨拶をしてくれた。私が中国語を話せたら色々と話をしてみたいなぁと毎度ながらそんな事を思わせてくれる。

 ここも他の集落と同じく閩南建築が美しい集落で、各家々の壁に貼られているタイルもこの建築にとてもマッチしていて色彩がかわいらしい。玄関先にはブーゲンの鉢も置いてあり、右を見ても左を見てもどこもかしこも美しく、あぁ、こんなところを独り占めしてゆっくり過ごせるなんて幸せすぎる、なんて事を思いながらぶらぶらと散策。

 特に地図も見ずにうろうろと集落内を歩いていた訳であるが、唐突に広い道に出た。集落内では何だか太古の街中にタイムスリップし彷徨っていたような気分だったので、急に現代に引き戻されたようで不思議な気分だ。

 そろそろバイクを停めたところに戻るか、と歩いているとリノベーションされた建物に店舗が幾つか入っている雰囲気ある建造物があり、その1つにカフェもあったのでちょっと一休みすることに。

 店内に入ると笑顔でお店のお姉さんが迎えてくれた。

 何か冷たいものでも・・・と思っていたのだが、ショーケース内にメロンの乗った美味しそうなケーキを発見。ひとまずこれを選び、お茶を何にしようか悩んでいるとお姉さんがGoogle翻訳を駆使してお茶の種類など色々説明してくれる。で、結局「メロンケーキだったら温かいオレンジ(フレーバーの)茶が合うわよ」と言うので、メロンにオレンジか〜(う〜む)と思いもしたが、お店の方がそう言うのであれば、そうするか、という訳でオレンジ茶を注文。

 結果、大正解でケーキもお茶もどちらも素晴らしく美味しかった。店内にはずっとピアノの音楽が流れており心地良い。日本から持参した本を読みながらしばし寛ぐ。

 この後は、東の端に1つ見たいものがあったので、そこまでバイクで走り、金城に戻りがてら夕日でも見ようという計画。
 なので小1時間ほど経ったところで、そろそろお店を出ようかなと思っていたところ、タイミング良く?お姉さんが差し湯を持って来てくれたので、有り難く頂くと「ま、もう(東の方まで行かなくても)いいか」という気分になり、このままずっとカフェで過ごし、この後は夕日を見て宿に戻ることにした。

 東の方はまた次回にでも行ってみよう。

 結局私の旅はいつもこんな感じでなのである。あれもこれもと色々見て回るのが苦手で、1つ気に入った場所を見つけるとそこでゆっくりと腰を下ろしてしまう。そんな理由もあるのだが、やはり折角ここまでやって来たのだから、地元のお店でゆっくりし地元民と同じような時間を過ごす – これこそが旅ではないか、なんて改めて思ったり(私見ですが)。

 いい感じでリフレッシュして(と言いつつ午後はまだ瓊林しか回ってないのだが)、夕日を見に慈湖へ。その手前に南山集落というのがあるので、そちらもちょっと見学。

 ここは今日回って来た珠山や瓊林集落とは違い、地元の人たちの生活臭が少しばかりあるローカルの集落であった。それほど広くない集落だったけど、日が傾いた夕暮れ時地元の人たちの生活もちょっとばかり覗けたようなそんなところだった。

 この後、この南山集落のすぐ近くにある慈湖という湖近くにある「慈湖三角堡」へ ー ここからは対岸の廈門もよく見渡せ、そしてその廈門に向けて戦車が何台も並べられている。ある意味金門島らしい風景と言ってもいいかもしれない(わたし的にはやはりこのような物々しい雰囲気よりも閩南建築が美しい集落こそが金門島らしい良さだと思っているのだが)。

 見張り台のようになった建物はカフェになっており、先ほどオレンジ茶を飲んだばかりであるが、ここでもゆっくりと寛ぎたく、またまたドリンクを注文しのんびりと。

  この日は雲が多く対岸の廈門は殆ど見えず。

 この後、湖に掛かる橋を渡り、ビーチへと出て夕日を眺める。ここには沢山の忍び返し(敵の侵略を防ぐ鋭利な金属棒をずらりと並べたもの)があり、この忍び返しと共に夕景を撮る事ができる。

 しかし、そんな景色はやはり写真映えには向かないのか、昨日の金門大橋の袂近くほど人がおらずぽつりぽつりという感じで人影はまばらだ。2、3組写真を撮っている人たちや後は地元民が貝を拾っているという感じ。

 確かに何となく寛ぎながら夕景を楽しむとしたら、忍び返しのあるここよりも金門大橋近くの方がいいかもしれない。ここはここで金門島らしいというか、一味違った夕景を楽しめるところではあるのだが。

  日が沈みかけ、ビーチがオレンジ色に染まり始める頃、霧の中に浮かぶように対岸の廈門がうっすらと見えた。

  これでこの旅での廈門も見納め。そもそもが旅の目的の1つとして金門島から廈門を見るためにやって来たのが半年前(きっかけは更に遡る事20年前になるのだが)。それから今回の2度目の旅へと繋がった訳で、そんな廈門が最後うっすらと海に浮かぶように見えたのはちょっと感動的な光景でもあった。