秋空に舞う、長崎くんち 2023

 長崎っこが大好きな長崎くんち - コロナ禍の影響もあり実に4年振りの開催である。

 このお祭り、お諏訪さんと呼ばれる長崎の諏訪神社への奉納踊りが各踊り町より執り行われる訳であるが、現在その踊り町の数は59ヶ町である。毎年6~7町の踊りなどが奉納され、7年に1度の頻度で一巡する仕組みである。
 つまりは今年見た踊りを見る事が出来るのは次は7年後であり、今回の踊り町の出し物はコロナ禍で中止になった事と合わせると実に10年振りという事になる。

 今回の出し物が披露された10年前は私は関東に居たし、その前の17年前、24年前も同じく関東に居て、おくんちを見た記憶はない。となると31年前・・・?は、私は高校生でうーん、この時何となく見たような気もするが定かではない、という具合に久し振りのお目見えである。

 今回は折角帰省して見る訳でもあるので、踊りが披露される中央公園のチケットを購入し、座席を確保して見る事とした。そして運がいい事に砂かぶり席と呼ばれる1番前列の席を取る事ができた。

 1時間遅れでようやく開始し、先ずは最初の踊り町 - 丸山町の登場だ。ここは昔から遊郭がある町でもあり、披露された「本踊」は実に艶やかで、唐人さんに扮した踊り子さんも登場し丸山の芸妓衆と戯れる踊りも披露してくれた。

 因みに踊り奉納の前には各踊り町、まずは 傘鉾(かさぼこ)と呼ばれる1本足の鉾が登場する。傘鉾にはその町の特色となる意匠や刺繍などが施されており、この傘鉾もぐるりぐるりと何回も回転し、我々観客の目を楽しませてくれた。

 2番手に登場したのは本石灰(もとしっくい)町の「御朱印船」だ。本石灰町も長崎の飲み屋街に位置する町で私の好きな中華店 - 康楽(かんろ)があるのもこの本石灰町で、夏に帰省しこちらで食事をしていた時に偶然練習風景にも遭遇し、熱心な稽古風景を目にする事ができ、今回とても楽しみにしていた。

  この船、5トンもあり兎に角迫力が凄かった。こちら貿易商の荒木宗太郎が、ベトナムの王女で妻のアニオー姫と長崎港に戻ってきた時の様子を再現しており、参加している方々の人数も多く、実に豪華絢爛でした。

 3番手に登場したのは栄町の「阿蘭陀万歳」だ。どうやら踊り、そして船、という具合に交互に披露してくれているようで、見る側もメリハリがあって楽しめる。

 阿蘭陀万歳は長崎に漂着したオランダ人が生計を立てる為、正月の祝儀集めに回っている際に覚えた万歳を披露するというストーリー仕立てで、オランダさん(長崎では昔住んでいたオランダ人の事をオランダさんと呼んだりする)が登場する辺り、実に長崎らしいなぁと思ってしまう。

 そして、個人的には栄町の傘鉾の舞がどの町よりも1番優雅に舞っていたように思う。

 4番手には船大工町の「川船」が登場 - 川船は比較的、軽量の船という事もあってか、小気味良く何度も右へ左へと船を回転させる様が迫力満点で、最初に船頭に扮した子供が滝に向かう鯉を網で狙う「網打ち」も魅力の1つとなっている。

 網打ち大漁となった後には、根曳(ねびき)衆が船を曳き回し、激流に立ち向かっていく様を表現しているとのことで、根曳衆の衣装には波模様が施されております。

 5番手に登場するのは、桶屋町のこれまた「本踊」。桶屋町の踊りは丸山町のとは一味違い純和風な雰囲気で、見た目は歌舞伎の演目なんかも思い起こさせてくれた。

 こちらの傘鉾は、からくり仕掛けの白象とオランダ人で構成されており、時計や象の鼻が動くという実に珍しい傘鉾でした。因みにからくり仕掛けの傘鉾はこの桶屋町ともう1町しか存在していないとのこと。

 最後は万屋町の「鯨の潮吹き」が登場 - 万屋町は長崎の中心部にある町のせいもあってか、こちらも本石灰町同様、実に豪華絢爛、登場する方々の数がとても多く、さすがは万屋町、という感じであった。

 因みにおくんちは3日間開催される訳であるけれど、「鯨の潮吹き」の中ではこの3日間の中でも季節が移ろい、後日(あとび)になると冬の様相になり、船にも雪が積もっているという仕掛けになる。子鯨も登場し、江戸時代の古式捕鯨の様子を魚問屋の町として栄えた様を表現してくれた。

 「ヨッシリヨイサ」という独特の掛け声と共に鯨の背中から噴出す潮(水)にずぶ濡れになりながら、根曳衆が鯨を曳き回し、我々を魅了してくれ、何度も「モッテコ~イ」のアンコールに応えてくれて、大盛り上がりで閉幕。

 そんな訳で各踊り町30分程の奉納踊り、合計3時間あっという間に過ぎました。これらの踊りはまた7年後、そして来年はまた違う踊り町の奉納踊りがある訳だけれど、また来年も見る事が出来たらいいな、と思いつつ中央公園を後にしました。

 長崎くんち、やっぱり最高でした。