長崎精霊流し 2020

 コロナ禍の昨今、中止か否かと言う話もあったけど、今年も長崎市・お盆の伝統行事、精霊流しが、しめやかに執り行われた。

 - 長崎では初盆にあたる家は精霊船と呼ばれる船を作り、8月15日の日、昼頃から多くの家族や親戚、知人が集まり、時には出発前にちょっとお酒を酌み交わしたりし、夕方頃から長崎市の海-大波止を目指して船と共にみなで練り歩く - 花火や爆竹を鳴らしながら - それが長崎の精霊流しである。

 私も高校生くらいの頃から担ぎ手の助っ人として、何度か精霊流しには参加した事があるが、やはり船を出す側となると色々と大変のようである。-担ぎ手となる人を集めたり、何より船自体(大きさの大小こそあれ)作るのに予算もそれなりに掛かるし、制作日数もそれなりに掛かるからである。

 そこで、登場したのが、もやい船 - いわゆる共同船、である。町内で1つの船を作り、そこに故人故人の写真や家紋の入った盆提灯を飾り、一緒に流しましょう、という発想である。

 今年は叔母さんの初盆であったのだが、うちもこのもやい船を利用させてもらい、葬儀を行ったところから出す船で他の方々と一緒に流させてもらう事にした。

 長い竿の先に灯篭を付けたもの - 印灯篭と呼ばれるものを持った人が船の先頭を歩き、この灯篭には故人が好きだったものが描かれている(例えば、ビールだったり、将棋の駒だったり)。その後に鐘を叩く人が続き、掛け声は「ドーイ」、「ドーイ」と言っているのだが、これは「ナムアミダブツ」が訛って、「ドーイ、ドーイ」となったと言われているのだが、相当な訛り具合だ。

 船は16時半にNBC別館(今年はコロナ対策で蜜を避ける為にNBC別館が出発地になった)を出発し、今年は船も少ないのか、どんどんと進む。通常だったら船を止めたりして爆竹を流したりとゆっくり進むのだが、今年は爆竹の量も減らして、ちょっぴり自粛気味。何より出している船も例年より少ないらしく、いつもより進むスピードが速い。

 暫く進むと船の先頭部分の”みよし”と呼ばれる箇所に「魚」と書かれた船が右の方からやって来た。はっぴにもお揃いの「魚」のマーク。みよしには通常、故人の苗字が刻まれており、もやい船の場合は、町名が記されている。

 この森のような”みよし”の感じと「魚」の文字だったら、長崎人だったらすぐに分かる - これは魚の町のもやい船だ。町内のもやい船は毎年デザインが同じで、昔から見ているので大体が直ぐに見てどこの町内か分かるものである。 - 例えば、みよしがやたらと大きな船とか、それぞれの町の特色は船のデザインにずっと引き継がれているからである。

 大きな船はやはり製作にお金も掛かるし、家族だけでそれ程おおげさでもなく、という事で最近は小さな船もよく見掛けるようになった。この小さな船もかわいらしくていいものである。今回は時間が早かったせいもあるのか小さな船がよく目についた。
 
 小さい船をみんなで担ぎ、時に休憩しながら花火をする - 実に長崎のお盆らしい風景だ。

 船は順調過ぎるくらい順調に進み、通称、赤寺と呼ばれる崇福寺前をあっと言うに通り過ぎて、ここから所謂メインストリートとなる思案橋に出る。

 思案橋から浜の町に掛けてもっとも観光客も多く、その後県庁坂を上って下れば、もう終着点の大波止だ。そういう訳で、この辺りから精霊流しもいよいよクライマックスを迎える。

 例年だったら観光客も沢山なのだが、今年は流石に少なく、警備に当たる警官にものんびり気分な雰囲気が漂っている。

 4年前にも船を流したのだが、思案橋に到着した頃には日も沈み掛け薄っすらと暗かったのだが、今年はまだまだ明るい。ルート的に県庁坂を上った所が別ルートから来る船との合流箇所になっており、浜の町辺りでは船が全く進まなくなってしまうのが常であるのだが、今年はそんな事もなく全てが順調で、船も止まる事なくどんどん進んでいく。

 前回は爆竹の支給もあったのだが、今年は各人が用意した分のみ。私は特に持参しなかったのだが、県庁坂を上っている途中で、いきなり見知らぬおじさん - 恐らく丁度船を流し終えたばかりの方 - が道路向こうから、私のところにトコトコトコと歩みよってきて、無言で、そして笑顔で爆竹を渡してくれた。

 他にも多くの人が居た中で何故私にだけくれたのか、、。しかし、あまりに一瞬の事だったので、私も何だかあっけに取られてしまった。

 袋の中を見ると爆竹の箱が40個くらい入っていた。さすがに1人では消費できないと思い、周りの方々や他の船の方にお裾分け。爆竹を持参していた方が親切にも火を点ける用にと線香を分けてくれた。

 思いがけず最後に爆竹を頂き、しめやかに始まった精霊流し、最後は派手に爆竹を鳴らしながら、叔母さんを送り出して来ました。

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