ある晴れた日の午後、思い立って湯河原へ行ってきた

 3連休である。

 近頃の週末の休みの過ごし方は朝から自転車で近所のカフェに行き、コーヒー片手に読書である。しかしあまりにも毎週毎週同じように過ごしていると、たまには違った事をやってみたくなるのが人の常というもので、連休でもあるし、なお且つ天気も秋晴れ、今日は自転車でどこか遠くへとも思ったり、しかし、何となく電車に揺られたい気分の方が勝り、そーだ、と1つの考えが浮かんだ。 - 踊り子号で熱海を訪れる際、熱海の手前で停車する駅 - 湯河原という駅名が何となく以前から気になっており、日帰りで行くのは持って来いの場所であるような気もしてきて湯河原へ行く事にした。

 行くと決まったら出発まで早いのが私の取り柄でもあり、さっと準備を始め、湯河原着いてどこへゆこう?と思ったりもしたが、何だか携帯片手に色々と調べるのも野暮ったく思え、案ずるより何とやら、、という訳で家でうだうだと調べている時間も勿体ないと思い、早速駅に向かった。

 最近はどこへ行くにも軽く下調べして出掛ける事が多くなり、それはそれで別にいいのだが、嘗てガイドブックも持たずにアジアを旅した頃のように、今回は出たとこ勝負で、何も調べず現地で情報を得ながら色々回るのもいいのではないか、と思い、電車の中でもそして、到着してからも何も調べず、自分の勘を頼りに湯河原を巡る事にした。

 何なら携帯すら家に置いていこうかとも思ったが、まぁそこまでしなくても、と携帯だけは持って出掛ける事にした。

  横浜駅にやって来た踊り号は前回と同じく新しいタイプだった。電車に揺られる事約1時間程で湯河原へ到着。何と言ってもネーミングが”湯の河原”である。駅を抜けると何となしに岩場のごつごつした世界に湯煙、という光景を想像していたが、やはりそんな訳もなく駅前はここいら辺りとでも言おうか、やはり普通の駅前の光景であり、感想として「なるほど、まぁこんなものか」というのが第一印象であった。

 とは言え、駅前の広場は何となしに小洒落た感じがしないでもない素敵な木枠で造られた駅であった。

 さて、到着したはいいもののどうしようと思ったり。右へ行くか左へ行くか。やはり闇雲に歩くよりもまずは観光案内所へ。しかし、ここに入っていきなり「何か面白いとこありますか」と聞くのも抽象的過ぎるというか今どきそんな観光客なんているのだろうか、それはそれで何となしに無粋だな、なんて(勝手に)思ったりして、ここではとりあえず地図だけ貰う事にした。

 しかし、ここで入手した地図というものが町中全体の地図と言った感じで広範囲すぎる所謂(いわゆる)普通の地図でどうもポイントが掴みにくい。。どうしたものかと思ってちょっとばかし右往左往していると観光案内所の3軒ほど先にミニギャラリーのような建物があり、ここでも湯河原の見所を映像で流していたり、ちょっとしたパンフレットが置いてある。ひとまず入ってみるとここの壁に描かれていた地図が、わたし的にはヒット、というかとても見やすい地図であった。

 この地図によれば駅を出て右に折れ、その道沿いを山方面へ進んでいくのが散策ルートとして面白そうだ。

 ルートを試案しまずは蕎麦屋に立ち寄り、その後五所神社、そこから更に歩き川沿いの道に出て、その川沿いを歩いて行くと温泉に浸かっている人の絵があるのでここの温泉をゴールにする事とした。

 ひとまずは、ここの温泉地を目指し、あとはポイントポイントで気になったところに立ち寄ろうと決め、この壁に描かれた地図を写真に撮り、これを見ながら歩く事にした。

 ゴール地点まで距離がどれ位あるのかちょっとよく分からないが、まぁ歩けない事もないだろうと思い、行きは歩いてこの温泉を目指す事とした。帰りはきっと駅までのバスならどこからでも出てると思い帰りはバスと決め、早速歩き出すと蕎麦屋が見えてきた。お昼にはちょっとばかし早い気もしたが、ここでお昼を取る事とした。

 ここいら辺りはきっと山葵(わさび)が有名だろうと思い、今回は山葵せいろなるものを注文、こちら自分で山葵をおろし、それを蕎麦に直接付けて食べるというものだ。私は普段から蕎麦を食べる時はつゆに山葵は溶かさずに蕎麦に直接付けて食べているのだが(この方がきっと美味しいと思うので今後お試しあれ)、やはり自分でおろした新鮮な山葵は味が違い、とても美味であった。

 蕎麦を食し、更に歩を進める。次に目指すは五所神社だ。緑豊かで境内にある楠がとても巨大なご神木に護られた由緒正しきと言う言葉がぴったりな神社であった。

 若い学生風の方々も何だか熱心にお参りしたりしており、私もパワーを頂いてきた。お参りを済ませ、更に先を目指す。

 それにしても今日は暑い。夏も終わりに近づいていたがまだまだ夏のような日差しであるが、どことなく秋も感じさせてくれるまさに夏と秋の狭間をゆく天気だ。歩いていると道端にすすきなんか見つけて、季節は確実に進みやはり夏ももう直ぐ終わるのかとちょっと寂しさを感じたり。

 途中素敵な和菓子屋を見つけ、寄り道。中でも食べることが出来るようだったのでイート・インで注文するとお茶をサービスしてくれ、そんなちょっとしたお店の人の優しさにほっこりしてみたり。

 そこから少しばかり歩くとバス亭に「理想郷」の文字が - ここはシャングリラであるようだ。道沿いにある建物の中でお昼寝するワンちゃんの姿も。理想郷でお昼寝する犬はどんな夢を見るのか - そんな事を思いながら道を左に折れると涼しげな渓流の風景に出会えた。 - ここから先は川沿いの道になっており、それはそれでとても気持ちの良い散歩道であった。

 歩道に埋められたプレートによると町の木は”椿”であるようだ。伊豆大島も椿が有名な島であるが、ここいら一帯は椿の木が繁殖する、そんなエリアなのですね。

 それにしても今更だが、熱海とは随分と違った風情の町である。歩いているのは湯河原のほんの一部であるけれど、こちら側は何となく山と言うか渓谷風情のある町である。人も熱海ほど多くなく、ちょっとしたトレッキング的な気分で散策できるのも何だかいい感じである。

 暫く歩くと何やら大きなホールがあって、いかにも?若者風情の人達が沢山居る施設に行き当たった。ひとまずその建物まではいかず、ちょい手前左の方に滝が見えたのでそちらへ向かう事にする。

 この滝にふらふらっと誘われるように行くと先ほどの川沿いとはまた違った、こちらはもう少し本格的な渓谷に行き当たった。滝のところまで来ると滝の一部に光が当たり何だかとても綺麗だ。
 よく道が分からないが更に先に進めそうなので、どんどん進んでいくとここは先ほど目に入ったホールの裏手側にある道のようだ。ホールの裏手側(つまり私が歩いてる滝がある側)はテラスのようになっており、みなそれぞれに寛いでいる。どんな施設かよく分からないがここで後でお茶するのもいいかもな、と思いひとまず先 - 温泉施設を目指して歩く事とした。そう、色々と話が脱線して、これを読んでくれているみなさんもお忘れかもしれないが、私はまずは温泉施設を目指していたのである。

 駅のところに狸が見つけた湯河原温泉、みたいなオブジェと説明書きのようなものがあったと思うが、どうやら湯河原と狸は切っても切れぬ関係にあるようで、途中お狐さんならぬ、お狸さんを祭った狸福神社なるものもあった。しかし前日の大雨の影響か、軒並み川沿いへ踏み込んだエリアは規制線が張られ立ち入り禁止になっており、この神社へも立ち入る事はできなかった。そして、見下ろした先にある川っぺりにはイスがいくつも並べてあったりであれは何だろう?と思ったりもしたのだが、答えはこの後に。

 この川沿いを歩いて行き着いたところには「湯河原惚湯 - 惚湯テラス」であった。私が駅前で撮影した壁面の地図によるとこの辺りには足湯の絵と共に「独歩の湯」と書かれた文字があるのだが、この「独歩の湯」は結局どこにあるか分からなかった。「湯河原惚湯 - 惚湯テラス」は地図に描かれていなかったのだが、どうやらこの施設、20日前に出来たばかりの施設のようである。

  因みにこの施設のエントランス脇にある看板には利用料5,500円とある。5,500円?一体何の施設なのであろうか(後で調べてみるとここは温泉+読書施設で、温泉入り放題で食事付、本も読み放題のような施設で1日過ごして5,500円のようである)。温泉と読書施設とはとても気になる。しかし、5,500円はちょっと高い気もするが、、いつか訪れてもみたい施設でもある。

 所望の温泉施設が見つからず、来た道を引き返すと熊野神社の標識があった。熊野神社と言えば八咫烏(ヤタガラス)である(サッカー日本代表のロゴにもあしらわれている3本足のカラスですね)。そんな八咫烏が描かれた幟か提灯を写真に撮りたいなと思い、神社に行ってみたが残念ながら見つける事はできなかった。
 しかし、ここもなかなか赴きのある神社であり、しっかりとお参りしてきました。

 そして、この熊野神社に向かう途中、私が目指していた「こごめの湯」の標識を見つけた。先ほどの渓谷沿いには案内板が出ていなかったのは何故であろうか。まぁそれはよいとして、熊野神社に向かおうとして見つける事ができた「こごめの湯」、これはきっと八咫烏さまのお導きであろう。

 熊野神社を出て「こごめの湯」に向かう途中で、今、車から降りたばかりで観光に来たと言う男性から道を尋ねられた。どういう訳か知らないが私を地元の人だと思ったらしい。(地元風情のしたり顔で歩いているように見えたのであろうか。)
 男性は万葉公園というところに行きたいらしかったが、そう言えば先ほど見たホールのところで「万葉」の文字を見た気もする。しかし、あれはあの一帯の土地の説明書きで「万葉集に歌われた」みたいな書き方だったような気もするし、イマイチ記憶が判然としない。

 「それってどんなとこですか?」と逆に質問するとと「何やらテラスなんかがあったりで、のんびりできそうな場所で・・・」とのこと。そう言われてみると先ほど通り過ぎたホールがそのような気がするので、「ここから下にくだるとそんな感じの場所がありましたよ」と教えてあげ、私は温泉へ向かった。

 温泉で一汗流し、先ほどのホールのような施設に私も向かう事にした。道を下っていくと「湯河原惚湯 - 玄関テラス」の案内看板が出ている。先ほど5,500円の施設と頭は同名の名前であるが(先ほどの施設名は「 -惚湯テラス」)、こっちの玄関テラスの方は自由に出入りでき、1Fがカフェの注文スペースになっており、施設の中央には沢山の本が置かれている。しかも、どれも私の興味を惹くような本ばかりである。

 2F部分はコワーキングスペースと休憩エリア、そして先ほど私が外から見たテラスがある。ここのカフェを利用すると館内にある本は自由に席に持っていって読むことができるらしい。因みに先ほど規制線が張られて近寄れなかった川沿いのイスもこの施設のもので、普段は川沿いでお茶しながら本を読んだりできるらしい。

 残りの時間はここで過ごす事とした。持参した本を読み、気になった雑誌や本も自分の席に持ってきて、ゆっくりと過ごす事にした。

 テラスからは滝の流れの音が聞こえ、とてもリラックスした時間を過ごす事ができる。


 今回の旅はあくせくと色々見て回ることはせず美味しい蕎麦を頂いて、神社を詣で、温泉に浸かり、最後は本を読みながらゆっくりとカフェで過ごした。色々と下調べもせず自分の勘だけを頼りに巡った湯河原だったけど、(だったからこそ、かもしれないけど)、なかなかにいい旅ができた。

 そして、最後にこの場所(「湯河原惚湯 - 玄関テラス」)と巡り会え、とてもよかった。ここはいつかまた再訪したいところである。

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