再びのベトナム - ムイネー・ベトナム 2004

  - クビントゥアン省・ムイネー

 早朝、町中を歩いていると原チャリから降りたばかりといった感じで、ヘルメットを取った女性と目が合い、彼女から「シンチャオ~」と挨拶された。知っている女の人?と思いを巡らす間もなく彼女はそのまま何処かへと歩き去ってしまった。

 ー ラオスから乗った夜行バスでベトナムのフエに到着し、宿のあるエリアまで歩いていた時の出来事だ。

 この瞬間私は、「あぁ、ベトナムに戻って来たのだな」と妙に実感した。タイやラオスに比べるとベトナムは人と人の距離が近い気がする。タイ人やラオス人は、目が合うとにっこりと微笑んでくれるけど、こんな風に親しげに声を掛けて挨拶してくれる事はあまりなかったように思える。約1ヶ月振りに感じるベトナムらしさであった。- そう、私は今、再びベトナムへと舞い戻ってきたのである。

 フエの町は相も変わらず静かで天候もよく食べ物も美味しい。快適ではあったが、2度目の訪問と言う事もあり今回は2泊だけし、早々にホイアン - 前回、韓国人のチャンと別れ別れになった町だ - に向かう事にした。(その時のBlogはこちら

 翌日の昼頃、そのホイアンに到着した。バスを降り1人、前回よく訪れた川沿いの道に出てみると当たり前だが馴染みのある道と言うか町並が広がっていた。あの頃は韓国人のチャンの他、同じく韓国人のソップやドイツ人、そしてハルピンで日本語教師をやりながら、休暇を利用しここホイアンを旅している日本人の方々と出会い、夜は夜でみなでお酒を飲んだり語り合ったところだ。

 そんな記憶が蘇ると同時に今ここに1人で居る事が妙に寂しく思え、暫く1人で川を眺めていたが、ここではもうやるべき事はないように思え(そもそも長旅の最中はそんなにやるべき事もないのだが)、このまま夜の便で次の町へ行こうかと言う考えが頭を過ぎり、ツーリストオフィスに戻り、次の目的地であるムイネーという町までのバスを調べてもらうと夜行便に席があると言う。暫く思案したがやはりもうムイネーに行こうと思いそのバスを予約し、オフィスにバックパックを預け、バスの時間まで少しばかりホイアンの町を歩く事にした。

 この日はどうやらタイからここホイアンに要人が来る事になっているらしい。その為か町中にはタイの国旗が溢れ、夕方からのパレードに合わせてという事もあり、沿道は沢山の人出で賑わい皆タイの国旗を片手にし歓迎ムードが街中に漂っている。そんな様子を少しばかり眺めた後、バスに乗り込み南部のリゾート地とも呼ばれるムイネーへと向かった。

 そんな訳で今回のホイアンでの滞在は僅か5時間ほどであった。

 ベトナム南部のリゾート地としてはニャチャンが有名である。この当時ムイネーに行く旅行者は殆どおらず、当初ベトナムのオープンツアーバスのチケット(1ヶ月の有効期限であった為、まだギリギリ有効期限が残っていた)をハノイで購入したのだが、このチケットは購入時にストップオーバーする町を決めなければならない。そこでチャンと話し合い、「ニャチャンはメジャーで人も多いだろうから、ちょっとマイナーなムイネーの方にしよう」と言う事でムイネーに決めたのだが、訪れてみるとやはりここはマイナーなところ、チャンと2人ならまだ夜ビールでも一緒に飲んで楽しめたであろうが、他に旅行者も見当たらず、結局1人寂しくのビーチリゾートとなってしまった。

 ここまで来るとホーチミン市まで僅か200kmの距離である。この後はそのホーチミン市に寄り、そこから先はカンボジアに入る予定である。それにしてもベトナムに再び入ってからフエに2泊し、ホイアンには5時間だけの滞在、そして再びバスに揺られる事12時間でニャチャンに到着し、小休憩を挟み再びバスに揺られ6時間後にムイネーに到着となかなかのスピードで南まで下ってきた。

 今回ベトナムに戻って来たのは、どちらかと言うと本来思い描いていた旅のルートに戻る為というのもあるのだが、ホーチミン市では行きたいところがあった。これはホーチミン市のBlogで紹介する事とし、そんな訳で再訪ベトナムとなった訳であるが、南ラオスの印象が強烈過ぎた為か、今回のベトナムは何だか気持ち的に消化試合のような感じになってしまい、先へ先へと移動する事となった訳だが、この強行軍がよくなかったのかムイネーに到着して2日後、この旅に出てから初めて本格的に体調を崩してしまった。

 リゾート地に来て体調を崩すとは最悪である。が、そんな事を思う暇もない位体調が悪い。お腹も下し、トイレに行っては吐いたりを繰り返し、熱も計ってみると39度近くある。

 強行軍だったと言う理由だけでなく何か他に理由があるのだろうか?特に何かいけないものを食べたという記憶もない。敢えて言うなら朝、ニャチャンに到着した時に歯を磨こうと思い、ツーリストオフィスのトイレの前で歯を磨きながらトイレの順番待ちをしていたら、ツーリストオフィスの人が建物の前にある水を指して「水ならそこにあるよ」と言うではないか。そこに目を向けると確かに水が地面から管のようなものを伝い噴出しているというか湧き出しているのだが、何の水だろう?地下水から汲み上げている水?と正体不明な水であったが、まぁいいかとそれで口をゆすいだ位であるが、それが実はよくなったのだろうか、、などなど朦朧としながら考えたが原因はよく分からず終いであった。

 今回の長旅に備え出発前には日本で予防接種を何種類か打って貰い、あとは、近所の病院で抗生物質を処方してもらっていた。結果を言うとこれが実によく効いた。この後、インドで知り合って熱にうなされた旅人にも分け与えたところ翌日には彼の熱も下がり回復するという効き過ぎる位効き目がある薬だったのだが、ここムイネーでもその抗生物質を飲んだ翌日は何事もなかったように体調はすっかり回復してしまった。

 先日とあるTV番組である大学の教授だったかが抗生物質を飲むとこれまで自分が持っている腸内細菌が全て入れ替わってしまう - というような事を言っていたが、やはりそうであろうか。この長旅から帰って来てからというものの、どちらかと言うと腸が少しばかり弱くなった気がする。これはインドで滞在中、もの凄い腹痛になってしまい、それがそのまま腸の弱さに繋がってしまったかと思っていたのだが、どうやら、この抗生物質と腸内細菌が関係し、私の腸内細菌はこの旅で一掃されてしまったのかもしれない、とそんな事を今更ながら思えるようになった。

 そんなこんなんで折角のリゾート地、ムイネーでは殆ど寝ていた記憶しかないのだが、ムイネー最後の日、夕陽がとても綺麗だったのがせめてもの救いである。

 旅をしていると当たり前だが色々とある。
 
 そんな事を噛みしめながら、翳り行く夕陽を地元の犬と共に楽しんだ。

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