瀬戸内国際芸術祭2022 ~ 宇野港、直島

 今年もこの季節がやって来た - 瀬戸内国際芸術祭の季節だ。春、夏、秋と3会期に渡る芸術祭で、今回は3年前と同様、秋会期に訪れてきた。

 因みに芸術祭の会場となる高松港発、東側の島々は実はこれまでに全て訪れた事があるので、今回は趣向を変え岡山の宇野港に行ってみる事にした。以前は高松港から宇野港までのフェリーがあったようだが、残念ながら現在は廃止されており、それならばと前々から狙っていたルート - 宇野港から直島を経由し、船で高松に行くというルート - を今回実践してみる事とした。

 そんな訳で早朝7時48分、新横浜発の新幹線に乗り込みまずは一路岡山へ。天気は快晴、富士山もはっきと見渡せる絶好の芸術祭日和だ。

 岡山駅で桃太郎像に迎えられ、直ぐに宇野港行きの市バスに乗り込む。ラッキーな事にこの日は何故か市バスが無料の日で、宇野港までただで行く事ができた。宇野港まではなかなか遠く、岡山駅から1時間程掛かる。

 定刻通り、1時間程走ると遠くにこじんまりとした宇野駅が見え始め、ここでバスを下車。宇野駅は見覚えのあるデザイン - 以前粟島(香川県西部の島)で見た、イタリアの作家、エステル・ストッカー風に仕上がっており、とっても素敵である。

 駅構内にある芸術祭専用の案内所で町の地図を貰い、早速散策開始。宇野港周辺は高い建物もなく、遠くまで空がすっきりと見渡せのんびりとした雰囲気の港町だ。

船底の記憶 - 小沢敦志
終点の先へ - 小沢敦志

 早速てくてくと歩き、作品を幾つか見て回る。「時間屋」と題された一筋の塩が建物の上から降ってくる作品 - 46億年前からずっと海に溶けていた塩を取り出したこの作品は、悠久の時の流れを感じさせてくれる作品だ。

 横浜で何度かお会いした事がある片岡純也さん+岩竹理恵さんの「赤い家は通信を求む」も、片岡さん達らしい作品で、かつてここで暮らしていた人達の気配を感じさせてくれるものであった。

 そして旧病院内で展開されていた映像作品、こちらは建物内は撮影不可だったけど、院内も作品もどちらも素晴らしく、しばし、ソファに座り作品を鑑賞したりといい時間を過ごせました。

時間屋 - 長谷川仁
赤い家は通信を求む - 片岡純也+岩竹理恵

 岡山駅に着いてからここまで来て、ずっと歩きっぱなしだ。どこかでお茶でも飲みながら休憩を、と考えたけど、次に見る作品は少しばかり離れたところにあり、周辺にお店はなさそうだ。時間も丁度お昼時になったので、どこか昼食が取れるところを探しつつ、取り敢えず次なる作品がある公園へ向かう。公園では蘇鉄の木の下で丁度お弁当を食べてらっしゃるお二人が居て、なんだかいい日常だな、なんて思った。

 結局お昼は公園から少し離れたところで見つけたお鮨屋さんで、にぎりのランチを注文。出汁ものはお味噌汁でなくお蕎麦でした。

海の記憶 ー 内田晴之

 ここから直島を経由して高松に行く訳であるが、直島では行きたい美術館があった。直島まではここからはたったの30分ほどの距離だ。14時25分の船に乗るか、その次の1時間後の船に乗るか。15時25分に乗ると直島に到着するのが16時になってしまうので、美術館へ行く時間がないと考え14時25分の船のチケットを購入した。残りあと1時間半程度しかなく、宇野港での滞在時間はトータルで2時間半ほどという事になり、正直もう少し長く滞在したかった気もする。

 出港までの時間、船乗り場周辺の作品を見たり、瀬戸内海を眺めたりして過ごすが、やはり瀬戸内の海はいつ来てもいいものである。
 ずっと遠くどこまでも穏やかで、心落ち着く風景だ。港周辺では釣りを楽しんでいる人が居たり、ちょっとした芝生のところでのんびりと過ごしている人達も居たりと、ここいら辺りの生活はとても豊かそうだな、なんてそんな事を思う。

宇野のチヌ - 淀川テクニック

  去りがたし宇野の港を後にして、直島へと向かう。直島は3度目だ。今回訪れてみようと思っていた美術館は「李禹煥(リ・ウファン)美術館」だ。が、しかし、宇野で貰っておいた直島内のバスの時刻表を改めて船の上で確かめてみると、15時34分発で美術館行きのバスがあるが、帰りは16時13分に乗らないと高松港行きの最終船に乗れないようである。美術館に滞在できるのは正味20分か30分程度、、で、もし帰りのバスを逃すような事になると高松行きの船も逃してしまう事になる。

 思案した結果、美術館は諦め、港近くにある直島温泉(ここは3年前に訪れたところ)にでも行ってのんびり過ごそうかな、なんて思う。そして、こんな事ならあと1時間長く宇野に居てもよかったな、なんてそんな事を思いながら、下船すると、直ぐ目の前にバスが停まっており、「臨時便」の文字があるではないか。しかも李禹煥美術館も経由するバスのようである。 - 芸術祭期間中の臨時便のようで、そーか、そんな事もあるのか、やはり1本早い便で直島に来てよかった、なんて思いバスに飛び乗ると直ぐにバスは美術館へ向けて出発してくれた。ラッキーだ。

 李禹煥美術館  - 瀬戸内の海をバックに広がる巨大なアーチ状の作品は兎に角雄大で圧倒されっぱなしだった。美術館内も勿論よかったけど、個人的には美術館周りの自然と一体となった屋外作品の数々の方が好きだったかも。

 美術館の向かいにあった安藤忠雄氏建築の「 ヴァレーギャラリー」も堪能し、港へ戻るバスの時間まで少しばかり時間があったので、再度李禹煥美術館 の屋外展示の前で夕暮れの時間帯を楽しみました。

 そろそろバスが来る時間が近づき、バス亭に向かいバスを待つがなかなか来ない。私の前列には何語かよく分からない言葉を話している女性2人組みがおり、彼女等もバスが来なくて心配そうだ。そんな折、女性の1人から英語で「港へのバスはここで待ってて大丈夫ですか?」みたいな事を聞かれたので、「私も同じバスを待っている」旨を伝え、「恐らく少しばかり遅れているみたいだけど、同じバスだから」と教えてあげた。ついでにどこ出身かと聞いたら、何とバンコクから来たとの事。まさかこんなところにタイ人が居るとは思っていなかった事もあり、2人が話している言葉がタイ語だったとは全く気付かなかった。

 暫くするとバスは無事やって来て、2人に「このバスだよ」という事を教え、無事みんなで乗車 - 
 私も昔、アジアを長い期間旅をして、沢山の人にお世話になりながら旅を続ける事ができた訳であるが、その恩返しみたいなものが、ここでちょっとは出来たかな、なんて思うと何だか嬉しくなった。

ナルシスの庭 - 草間彌生

 無事、直島の港に到着し、高松行きの最終便 - 17時のフェリーチケットを購入する事ができた。乗船する事にはもうすっかり日も傾き始めた。

 思えば今朝、新横浜を出発したのは9時間ほど前だ。長い長い時間を掛けてここまで移動しながら、美術作品や美術館を巡り、そして船で高松へと向かうなんて、なかなか贅沢な旅ができたように思う。

 心残りがあるとすれば、宇野の町にもう少し滞在したかった気もする。いつかまた宇野の町を訪れ、そこでのんびりと1日過ごすってのもいいかもしれない。



 夕暮れに染まる瀬戸大橋、何度も言うようだけど、瀬戸内の海は本当に素晴らしく、ここで開催される芸術祭に今回もまた来る事が出来て本当によかった。

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