瀬戸内国際芸術祭2022 ~ 本島(ほんじま)

 本島と書いて「ほんじま」と読む、丸亀港から船で30分ほどの距離にあり間近に瀬戸大橋を望む島 - それが本島だ。

 高松港から行ける東側の島々(例えば直島や豊島)はネームバリューがあるというかメジャーな島々が数多くあり、美術館も整備されるなどし、瀬戸芸を訪れる殆どの人達が東側の島々を訪れる印象がある中、西側の島々はどちらかというとちょっとマイナーという感じもしないでもない。が、3年前に西側にある粟島と高見島を訪れて以来、私はすっかり、こちら側の島々が好きになった。島本来が持っているような素朴な景観の中、気取らない現代美術の作品を見て回るのは東側の島々とはまた違った魅力がある、そんな気がしている。

 さて、今回は高松駅から丸亀駅までは途中坂出駅で乗り換えるという簡単な乗り換えをどういう訳かミスってしまい、電車を1本逃してしまった。
 この1本の乗り遅れが地方での移動では致命的であり、本来10時20分に丸亀駅に到着する予定が10時37分に到着。ここから港までは10分位離れており、船の出発時間である10時40分には間に合いそうになく、仕方なく船も1本遅らせて12時10分発の船に乗る事となってしまった。

 乗船まで1時間ほど時間が余ったので、丸亀駅目の前にある猪熊弦一郎美術館のカフェに行く事とした。美術館自体は以前訪れた事があるので今回は時間的な事も考えカフェのみへ。そう言えば、高松に着いてからカフェでゆっくりとする時間も今までなかったので、丁度よかったかもしれない。

 さて、出だしからいきなり躓いた感があるが、気を取り直し丸亀港へ。高松港のターミナルと比べるとさすがに空いているが、本島を訪れる人達もそれなり居るようである。

 チケットを無事購入し、ここから30分の船旅 - 瀬戸芸関係者の人達に見送られいざ本島へ -

 港に到着後、島を巡るのに自転車を借りる事とした。レンタルサイクル屋にはちょっとばかり行列が出来ており、ここで借りられなかったら、電車を1本逃したせいだな、、なんて思っていたが無事借りる事ができた。

 そんな訳で早速まずは港周辺の泊/甲生エリアを巡ることに。

Vertrek「出航」 - 石井章

 

咸臨の家 - 眞壁陸二

 

咸臨の家 - 眞壁陸二

 

漆喰・鏝絵かんばんプロジェクト - 村尾かずこ

 島のあちらこちらで見かけたお洒落なイスはデンマークの家具メーカー”フリッツ・ハンセン”が本島とコラボレーションをしているようで、本当に島のあちらこちらで見かけました。風景に溶け込んだ作品でもあり、何よりも疲れたら一休みも出来るという、実益も兼ね備えた作品の数々、すばらしい -

 そして、到着して早々ですが、もうお昼時を過ぎていたので、途中で見つけた「笑くぼ」さんで弁当というか丼ものを購入。ここのお店の人達もみな親切でしたが、島で会う人会う人がみな笑顔が素敵で、島民みんな素敵な人柄の島ですっかり気に入ってしまった。

善根湯×版築プロジェクト - 齊藤正×続・塩飽大工衆

 ここから自転車を走らせ島の西部、笠島地区へ - 島の中に島の名が付く地区があるってのも少々ややこしい。本島は瀬戸内の中心地だった事もある為か(だから名前も中心を表すような本島という名前なのか?)、この笠島地区にある「まち並保存エリア」には古い町屋が建ち並び、ちょっとした京都とか飛騨高山を思わせてくれるエリアが広がり、島の中に雅(みやび)さを感じさせる少しばかり不思議な感じのするところであった。

 この辺りは芸術祭に関係なくまたいつか島を訪れぶらぶらして歩くのも楽しそうなところでした。

SETOUCHI STONE LAB – 川島大幸

 

SETOUCHI STONE LAB – 川島大幸

 このエリアの古民家で作品を展示していた藤原史江さん - 本人も在廊しており、色々と話を聞かせて頂きました。「無二の視点から」と銘打った作品は、キャンバスにサンドペーパーを貼り、そこに石で描くという作品の数々 - 描かれている風景もその石が置かれている場所から石目線で写真を元に描き起こしたというもので、まさに石の意思によって描かれた作品でお話もとても興味深かった。何より作家さん本人と色々お話ができたよかった。

 その他「レボリューション/ワールドラインズ」というポーランドの作家”アリシア・クヴァーデ”さんの不思議な作品などなど、ここのエリアには面白い作品多数で、また、石に関係した作品が数多く展示されているのは興味深かった。

無二の視点から – 藤原史江

 

レボリューション/ワールドラインズ – アリシア・クヴァーデ

 

レボリューション/ワールドラインズ – アリシア・クヴァーデ

石が視力を失っていないように、盲人も視力を失っていない。 – アリン・ルンジャーン

 ここの島の作品数は多くもなく少なくもなく丁度よい感じであり、また、多くが1エリアに固まっていたってのもあり回りやすいというのもよかった。

 最後に1つだけちょっとばかし離れたところにある「水の下の空」へ - 遠くに瀬戸大橋を望み(それにしても本島を回っていると何処からでもこの瀬戸大橋がよく見える)、朽ち掛けたような船とその下には反射した空 - 雄大で幻想的な作品で、今回、最後に観る作品としては最高だった。

 最後、島をちょっと自転車で散策し(さすがに島は広大で1周はできず)、帰りの船が出るまで港近くの”本島スタンド”で時間を過ごす。島ではあくせくと動き回らず、こうやってカフェでのんびりと過ごす時間も好きなので、ここのカフェで最後のんびりできたよかった。ここにも沢山フリッツ・ハンセンのイスがフィーチャーされていました。

水の下の空 – アレクサンドル・ポノマリョフ

 帰りは最終1本前の17時50分の船で丸亀港へ - 出港が近くなると数多くの島に暮らす人々が港に集まり始め旗を振っての盛大なお見送り。
 そして「本日は数ある瀬戸内国際芸術祭の中から本島を選んでくれて本当に本当にありがとうございました」なんてずっとアナウンスしてくれたり、船の横の桟橋からはテープを投げてのお見送り。よくよく目を凝らすとそこにはあの弁当屋さんの人達の姿が。

 出港時刻になり船が港を離れ始めると船と陸を繋ぐランプウェイが閉じ、小さくなって行く島民の方々。粟島でも高見島でも勿論、沢山のお見送りはあったけど、ここまで盛大なものはなかった。ちょっと過剰な気もしたけど、最後、段々と姿が見えなくなって行く様を見ると、ここまで歓迎してもらえた事に感謝、そしてやはり、ちょっぴり寂しくなった。船旅はやはりいつでもいいものである。

 そして、丸亀港が近くになるにつれ、そこではオレンジ色に染まった空が我々を出迎えてくれた。

 本島、とてもとてもいい島だった。

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