恐竜王国福井、そして雨の東尋坊

 みなさんは自分が意識して何処か国内へと出掛けたのはいつの頃で、そして最初の街は何処だっただろうか。

 記憶を辿るに私の最初の旅は京都への旅で、その時私はまだハタチ(二十歳)であった。あれから、旅に旅を重ね、気付くと訪れた都道府県は43になっていた。旅においては数をこなすというよりもやはり、どんな旅をしたかというような質が大事だと思うのだけれど、やはりここまで来たら残り4県はいつの日か訪れ、全都道府県を制覇したいと思っていた。

 そんな矢先、昨年末に横浜の私がよく行くカフェで福井が地元の人と出会った。福井はまだ訪れていない4県の内の1つである。

 その彼曰く、今年中には福井を離れ何処かに移住する予定であるとの事で、それならば、と先月別府を訪れたばかりであるが、3月の終わり早速に訪れてきた。因みにその彼はその後、話がトントンと進んだのか、4月には福井を離れるという事で、何とか滑り込みで間に合った。

 北陸新幹線が開通した今、半時計回りで行くか、時計回りで行くか思案した挙句、時計回り - つまりは新横浜から東海道新幹線に乗り、米原乗換えで福井駅を目指す事とした。今回の旅のお供の本は角田光代さんの「銀の夜」 - 全然福井に関係ないと思いきや、あとがきで、一旦は埋もれていたこの本を再発掘したのが作家の宮下奈都さんと書かれていて、最後にちょっと繋がった感じ。何と言っても宮下さんは福井出身の作家さんでもあるので、というのはちょっとしたこじ付けですが。

 新横浜駅を出て3時間後、福井駅に到着した。駅構内、そして駅前広場では沢山の恐竜達がお出迎え。さすが恐竜王国だ。早速この日はその友達が車を出してくれるという事で、合流するまで駅前を少しばかり散策。

 しかし、寒い。この日は関東にも低気圧の影響で寒波が襲来していたのだけど、福井もそれに漏れることなく寒い。北陸の空らしい曇り、と言ってしまえばそれはそうなんだろうけど、到着後雨も降り出し、何処に何があるのかもよく分からなかったので、駅前にある目新しい建物 - はぴりん - で暫し福井の物産などを見ながらやり過ごす。

 ”はぴりん”というこの建物、建物の半分がガラス張りの半屋外風になっており、そこでイベントもよく開催されているのであるろう、とっても素敵な建築でした。最近はどこに行っても同じような駅前広場が広がっている中、ここでは福井市民たちの憩いの場になっているのだなぁと思わせてくれる、よく考えられた街づくりを垣間見ることができました。

 小一時間程して友達が駅前に到着、約3ヶ月振りの再会だ。腹が減っては何とやらで先ずは蕎麦屋さんへ。ここいら辺りも蕎麦が有名であろうし、それにしても全国各地、何処に行ってもやはり私は蕎麦ばかり。

 入った蕎麦屋で、ここは京都にも近いことでもあるので京都名物のニシン蕎麦を注文。京都とはお出汁がちょっと違った昆布出汁の蕎麦で、それがニシンにも合っていてなかなかの美味しいお蕎麦でした。

 さて、この日は先ずは東尋坊に行く事とした。東尋坊と言えば、イメージと言えば何となしに1人でふらっと訪れた人がそこでそのまま・・・のようなイメージを抱いていたので(みなさんも大体がそんな感じではないだろうか)、海沿いのひっそりした静かな場所を想像していたのですが、、

 車を駐車場に止め、東尋坊までの道を歩く。雨も降っているが、風が凄い。横殴りの風だ。

 東尋坊に至るまでの道沿いには食堂やお土産屋がずらっと軒を並べ、何だかちょっと俗っぽい。ひっそりとそこに存在するどころか、1人でふらっと訪れてそこでそのまま・・・のイメージの欠片もない。

 別にそこが期待外れという訳でもなかったのだけど、なるほど東尋坊に至るまでの道沿いはこんな感じなのか、と訪れてみて分かる景色とでも言おうか妙に得心してしまった。元はといえばちょっと暗いイメージもあったのか、そこはやはりちょっと明るく、という事にしたのかもしれない。何だか昭和のような、そしてちょっとばかし台湾を感じさせてくれるこんな感じ、割と好きでした。

 5分ほど歩くと遠くに海が見えてきた。 - 日本海だ。何も遮るものがない為か風が凄い。こんな雨の中訪れるのは我々だけかと思いきや、意外にも観光客の方々が沢山いる。しかし、みんな傘を飛ばされないように必死に持って、慎重に歩を進め、海の近くまでのそりのそりと歩いている。

 我々も同様で、兎に角傘がトックリにならないように必死に持つのが精一杯という感もあり、意識半分は傘へ、そしてもう半分は景色へ、とそんな感じであった。

 あまり海の側まで行かずに遠くから眺めるだけでも十分かと思ったけれど、折角なら、と海の方まで進むとそこには荒波に侵食された見事な柱状節理の岩岩が。長崎の生月や、宮崎で見た柱状節理に負けず劣らずの素晴らしい光景でした。

 冷えた体を温まるべく、帰りは東尋坊から20分位の距離にある、あわら温泉へ。こちらは山間の温泉郷という訳ではなく、温泉ホテルが幾つか建ち並ぶエリアで、日帰り温泉を楽しんで来ました。

 最近は温泉を巡る旅も多くなり、すっかり温泉パッカーになりました。こちらの温泉、刺激はそれ程なくゆっくりとろりと、という感じのなかなかの名湯でした。

 最後は福井駅に戻って、久々の再会に乾杯。美味しい地酒も頂いてきました。旅のことやら、これからの事やら話したのかな、ちょっと記憶が曖昧。

 しかし近頃はすっかり誰かとのみに行くという機会がなかったのでとても楽しき福井の夜でした。

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