つげ義春さん的世界に誘われて 〜 伊香保温泉への旅

 群馬県には草津や四万、そして沢渡など謂わゆる名湯と呼ばれるものが幾つもある。

 これらの温泉地はいずれも訪れた事があるのだが、いつも伊香保温泉は素通りだった。以前、車で伊香保温泉の有名な石段下を通った際に、何とも風情ある温泉地だなぁ、いつかは訪れようと思いつつもなかなかその機会がなく、今回やっとの事で訪れるができた。

 東京の北、赤羽から四万号という名の列車に乗り込み、約1時間半ほどで渋川駅に到着、ここから更にローカルバスに乗って30分程でかつて私が車窓から見たあの石段風景の街に到着した。

 この石段を登り切ると開けた土地が広がり、そこに湯煙立つ温泉街のようなものが広がっていると勝手にイメージしていたのだが、どうやら、伊香保のメインストリート全てがこの石段になっており、そこを軸に左へ右へと路地が広がっているようだ。

 なので、結局のところ伊香保では何処へ行くにも階段を登り降りしなくてはならないし、街=石段、といった風情である。

 取り敢えずは階段を登り始め、上へ上と向かう。途中、蕎麦屋があったので、休憩がてら立ち寄り、頂上にある神社を目指す事にした。たまたまなのかどうかは分からないが階段の数は1年の日数と同じ365段のようである。

 神社の裏手に回るといい感じで少しばかり風情のある通り、そして建物が見えた。まるで、つげ義春さんの本に出てきそうな雰囲気である。そこから更に少しばかり先まで行くと露天風呂の温泉があるようだ。

 しかも、ここは源泉に1番近い温泉、つまりは伊香保の1番湯という事になる。

 入浴料はたったの600円、伊香保の湯は鉄分が多い為か酸化して茶褐色の湯で、なかなか、いい湯であった。この露天風呂、たまたま見つけて行った訳だけど、大自然の中にあり、今回の旅の湯では1番良かったかも。

 一旦宿にチェックインし、夕方頃、ちょいとばかし散策に。近頃は日が落ちるのがすっかり早くなった気もする。ぶらぶら歩いていたら、隣の?見晴台温泉街に。この辺りも落ち着いた雰囲気で良さそうだ。

 それにしても、伊香保の街中にはやたらと射的があって、まさに老若男女、射的を楽しんでいた。何だか台湾の夜市風情だ。そして、台湾で思い出したが、ちょっとばかり明かりが灯された石段街は、九份のようでもある。私が以前、九份を訪れた時も同じように小雨の空模様であったし、とそんな事を思い出したり。

 翌朝、昨日までのどんよりと曇った空から一転、見事な快晴だ。宿の窓からは遠くに赤城山が見渡せる。

 先ずは石段頂上付近にある、勝月堂さんに温泉まんじゅうを買いがてら朝の散策へ。このお店、いつも私が聴いているロバート・ハリスさんのラジオで伊香保に行く丁度1週間ほど前にたまたま紹介されていて、これは何かのタイミングだ、とばかりに到着した日のお昼頃に訪れたのだが、既に売り切れ。どうやら人気のお店のようだ。

 そして、本日、開店の10分ほど前の8時50分位にお店に到着したが既に10人ほどお店の前に並んでいる!そんなに人気店だったとは、と思いながら取り敢えず私も取り敢えず並んでみることに。こんなに朝早くからお店に並んだのは、そう、波照間島の泡盛 ー 泡波を購入した時以来だ。そんなことを思いながら、持参した本を読みながら待つ。

 こちらの温泉まんじゅうは保存料が入っていないというもので、出来立てを頂いて、とっても美味でした。ちょっとばかり並んだ甲斐があったというものだ。

 その後、お昼には水沢うどんを食す。どうやら日本三大うどんというのがあるらしく、水沢うどんはその1つらしい。
 因みに他2つは讃岐と稲庭らしく、私はどちらも現地で食した事があるので(稲庭は秋田)、これで三大うどん制覇である。

 最後はまたちょっとだけ石段街を散策し、温泉にも浸かり、またまた四万号に乗って帰宅の途へ。

 伊香保、なかなか良いとこで、またいつか行ってみてもいいかも。泉質がとてもよかった。