石黒亜矢子展 ばけものぞろぞろ ばけねこぞろぞろ、そしておお雨ライブを観る

 ー そのイベントを知ったきっかけはラジオだった。普段、仕事をしながら何となしにラジオを流しているのだけど、その日、チューンインしていたのは東京FMの「ディア フレンズ」という坂本美雨さんがパーソナリティを務める番組だ。

 その日、石黒亜矢子さんという絵描きさんをゲストに迎え、時折聞こえてくる話の端々に「妖怪」だとか「化け猫」というキーワードが出てくる。

 ちゃんと聞いてみると(仕事中は大体がいつもバックに流れる音として流している感じなので)、世田谷文学館で現在、化け猫というか猫に関する展示をしているらしい。更に詳しくサイトを見てみると、これは!、なかなか面白そうな展示である。絵のタッチは何となく見た事あるような気もする。しかしながら、そして恥ずかしながら、この時始めて石黒亜矢子さんという名前を知ったのである。

 その日のトーク内容を更に聞き進めると、音楽イベントとして6月17日に坂本美雨さんがギタリストのおおはた雄一さんとのユニット”大雨”のミニライブも行うとの事で、それならばと、早々にチケットを購入し昨日、出掛けてきた。

 世田谷文学館を訪れるのは初めてだ。京王線の千歳烏山駅で下車し、そこから歩いて15分弱ほど。世田谷は世田谷美術館もあるし、文学館もあるとは、なかなか文化色濃い町である。

 因みに訪れて知ったのだが、この文学館、館長は亀山郁夫さんでした。亀山さんと言えば、私が好きなドストエフスキーの翻訳本を幾つも手掛けている方で、そんな事とは露知らずで、なるほど、人選も素晴らしい文学館である。

 展示の方はというと石黒さんの初期の作品から最近の作品まで、そして手掛けた絵本などなどホント沢山の作品が展示されていました。猫が主役になった地獄絵図や石黒さん自身の娘達を題材にした作品、そして家で飼っている猫たちをモチーフにした作品などなど、猫好きの方は勿論、そしてそうじゃない方でもかなり楽しめる作品の数々だと思います。

 個人的にはあと、「わたしが好きなもの」(正確なタイトルは失念)と題したコーナーに石黒さんの愛読書や好きなぬいぐるみ、影響を受けたであろう本の数々が展示されており、こちらのコーナーは一押しです。年代的にも私と近いので、共感できるものも多く、そして石黒さんの頭の中をちょっと覗き見できたようなそんなコーナーでした。

 あとは、京極夏彦さんとの共作の本もあったりで、なるほど、何となしに作品を目にした事がある気がしたのは、京極さんの本の挿絵なんかで見ていた、という事だったと今更ながらに気付きました。

 さて、展示を見終わり、駅前に戻って、そこで少々時間を潰し18時半からライブのに備える。

 坂本美雨さんの歌声は勿論、ラジオとかオーディオの中で聴いた事はあるがライブはお初である。

 おおはた雄一さんとのユニット”おお雨”にも関わらず、この日は梅雨の晴れ間で朝から快晴だ。そして、18時半、暮れ行く日差しの時間帯の中、おおはたさんのクールなギター、そして美雨さんの優しい歌声が文学館内に響き渡りライブは始まった。

 一緒に観に行った友達もライブ後に想像以上、と興奮しながら言っていた通り、もの凄くオーラを纏った素晴らしい歌声でした。
 おおはたさんのトーク、そして作家の石黒さんも壇上してのトークも素晴らしく(流石にラジオパーソナリティも務めているだけの事もあり)、お三方による軽妙なトークも楽しめました。

 ライブの中で宮沢賢治の「星めぐりの歌」も唄ってくれたのだけれど、美雨さんの歌声を聴きながら目を閉じると昔旅した日本最南端の島・波照間島で見た星空の光景がまぶたの中に蘇り、あの時見た、満天の星空が浮かぶという不思議な体験をし、やはり坂本美雨さん、タダモノではなかった。

 素晴らしきライブ、ありがとうございました。

 

 石黒さんがユニット”おお雨”の為にデザインしたTシャツ - もうこれ以上増えるのも困るので、買わないようにしようと思っているTシャツなのだが、素敵なデザインの為、迷った挙句、結局購入してしまった。